踊り子鵜飼舟で渡る 今年はオンライン開催
「えひめYOSAKOI祭り」は、2004(平成16)年8月22日に愛媛県大洲市で「えひめ町並み博」の自主企画イベント事業として、大洲商工会議所青年部メンバーらで始まった、よさこい系のイベントだ。
愛媛県大洲市は人口4万2千人で伊予の小京都と呼ばれ、市街地の真ん中を肱川が流れる落ち着いた城下町だ。
えひめYOSAKOI祭り振興会(泉秀哉会長)が主催する「えひめYOSAKOI祭り」は、肱川の河川敷にある緑地公園をメイン会場にして、商店街やショッピングセンターなどでストリート、ステージの両方式で、よさこい鳴子踊りを披露してきた。
肱川右岸の緑地公園から左岸にあるお城そばの本町商店街の会場までの踊り子の移動では、鵜飼いのときに使う渡し舟で対岸に向かうのも大洲らしい情景となっている。
2019(令和元)年の第15回には34チームが参加。5チームは愛媛県外からの参加で高知からのゲストチームもあるが、愛媛県からの出場チームがほとんどで、地元大洲市とその周辺でよさこいチームが育っている。
内子高校郷土芸能部、おおず瀬のはやみ蓮、羅り瑠れ櫓連(らりるれろれん)、超弩級魂~HYPER SPIRITS~、大洲市連合婦人会、ロア・ナニ大洲フラダンスチーム、Dancingママ、大洲金融協会、跳星☆HOP☆STAR☆、大洲わっしょい連(当日参加連)、大洲ホーム、凛、24時間踊り隊、疾風迅雷、イエロー☆ベリー、竜王水風連、喜多っ子パワーズ、熱血!!北中YOSAKOI部、パワーぜんかい 平組!、久米☀NABURA、ジョイフルダンス、みかめよさこい「響」、橙の舞ひらり、まとい組、真美組といった地元周辺グループの参加がこれまでにあった。
地元で暮らす小中高校の子どもたちや教職員、地域の企業や団体を巻き込みながら、よさこいの輪を広げていったことが特徴的だ。
(商店街で踊る子どもたち)
ただ、2018(平成30)年8月は西日本水害で大きな被害を大洲市も受け、えひめYOSAKOI祭りは中止。所有していた音響機材も水没して使えなくなった。
そのため、翌年には愛媛県災害復興プログラムの一環でクラウドファンディングを活用した支援をお願いし、120万円の目標額に対して180万円を超える寄付があった。「この街が好き!だから僕らはここで舞う‼」をテーマにして復活。水害でしばらく使えなかった肱川沿いの公園に鳴子の響きが戻った。
とはいえ、その次の2020(令和2)年はコロナ禍のなかで、えひめYOSAKOI祭りは11月3日にNIPPONIA HOTEL 大洲 城下町から放送する形で動画配信によるオンライン開催となった。えひめYOSAKOI祭りに参加してきたチームらに声をかけて動画を提供してもらったほか、常連チームを出す喜多小学校には運動会で子どもたちがよさこいを披露すると聞いて、祭りスタッフが撮影に出向いたという。
10月11日にはオンライン開催に向けた動画撮影があって、えひめYOSAKOI祭りのメイン会場である緑地公園には大洲城と肱川をバックによさこいチームたちが、それぞれの演舞を披露していた。緑地公園の録画収録で踊った大洲市連合婦人会チームのメンバーが、11月3日のオンライン放送のインタビューに答えて、「毎年、同じ踊りを同じ衣装で仲間や成長した孫と一緒に踊れるのが楽しい」と語っていたのが印象に残る。
(大洲城を背景にオンライン収録する大洲市連合婦人会チーム)
えひめYOSAKOI祭りは8月に開くと昼間の暑さに耐えられないので、来年も11月の大洲まつりに合わせた開催になるが、肱川を踊り子が鵜飼舟で渡るコースは変えないでやっていきたいという。
(鵜飼舟で肱川を渡る)
この数年のうちに2回も中止や動画配信開催という異例の事態を乗り超えようとしている、大洲市のえひめYOSAKOI祭りが、これからも静かな城下町に刺激を与えて「人づくり」「街づくり」に貢献する祭りとして続くことを願っている。