お座敷文化とよさこい鳴子踊り

お座敷文化は、明治・大正・昭和・平成、そして令和へと、引き継がれてきました。

「お座敷」というのは畳があって、そこに小さな舞台もある。そうした部屋の中で、お客さんを前にして踊る。

そうやって、土佐の地でお座敷文化が培われていく一方で、よさこい節も生まれました。「坊さん、かんざし♬」だけではく、あの節に合わせて、誰とはなくさまざまな歌詞・替 え歌がつくられ、皆が口ずさみ、高知の酒席・お座敷では欠かせないものになっていきました。

■地を鎮める踊り 重心はお腹に■

お座敷文化を、古典舞踊の一つだと考えたとき、その起源を遡っていくと、安土桃山時代の女性芸能者「出雲の阿国」に到達します。

その時代、出雲の阿国さんが、〝たたらを踏む。足を踏みしめて、その土地にある悪霊を踏み鎮め平安の世を祈る”ということで、古典舞踊の基礎ができたとも言われています。

それが、「能」や「狂言」の中に入り、「歌舞伎」へと入っていった。よさこい鳴子踊りの原点となった踊り(日本舞踊五流派の師匠がつくったとされる)も、足を踏みしめ、土地の悪霊を鎮め、平安・安寧を祈るところから来ています。

そう考えると、そもそもの、よさこい鳴子踊りは、なるべくちゃんと足を踏みしめて踊りましょうね、というものだったんです。

古典の踊りで一番大事なのは、そこから派生した、よさこい鳴子踊りにも通じますが、お腹にちゃんと重心を決めて、そこが動かないように歩き、踊ること。

■実った稲穂が揺れるように 大事なのは腰の位置■

例えば、よさこい鳴子踊りの中に、稲穂がゆれるように踊るところがありますね。稲穂を想像してください。実った稲穂が、ゆらりゆらり風に揺れている。

でも、稲穂が根を張っている大地はしっかりしてるから、台風がこない限りは根本からは揺れない。

稲穂の重み、稲穂の重さで頭がたれる。それが、謙虚に風にゆれるということ。だから、稲穂と同じで、古典の踊りで大事なことは腰の位置が決まることだと思います。

■お客さんを呼び込み 一緒に「踊る」■

そして、もう一つ、お座敷文化と相通じることは、“お客さんを呼び込む”ということです。
よさこい鳴子踊りの歌詞に出てくる「よっちょれよ」っていうのは、「(すいません)ちょっとよってください。ちょっと、よっててくださいね」、で、(高知の城下へ)「きてみいや」というのは、「きてくださいね、きてくださいね」って、踊っている人と、お客さんの目線が自然と合うようになっているんです。

それは、お客さんも、みんな一緒に踊ってますよってこと。一つの振りに心を込めて、その意味が伝わるように踊れば、見ている人たちも、つい心が「躍る」。これがお座敷文化でいう「お客さんを呼び込む」ということ。

屋根のない、広い空の下、太陽の下でも、同じことが言えるのではないでしょうか。そういう風に、原点に戻り、もう一度、よさこい鳴子踊りを踊ってみようという方が出てきてくれたら、これほどうれしいことはありません。

(若柳 由喜満)