自由で多様な県民性 幕末から明治、そして現代の祭りをリード

土佐は眼前に黒潮を擁し、背後に四国山地を背負っているため、常に南の海を向いてきました。そのためか開放的で自由な気質を歴史的に築いてきたのですが、逆に言えば、きわめて無防備で脇と詰めが甘い特徴も備えていることを、土佐出身者の1人として実感もしています。
この県民性が、自由、多様性、開放性をキーワードにするよさこい祭りを立ち上げ、進化させてきたと言えるでしょう。進取の気風が充満しているのも高知の特徴です。南国らしく女性が働き者であり、行動的であることは、よさこい祭りで約8割が女性であることにも象徴されています。「高知シニア」チーム(2005年 踊り納め)の96歳の谷さんをはじめ、高齢者から幼児に至るまで、中でも20歳前後の女性がパフォーマンスに青春を謳歌している姿が、高知における女性の位置を表しています。キーワードの1つである〈自由〉は、チームとしての踊りの中にも見られます。例えば「サニー」チームは、腰より下は一定の型に基づいているが、上半身は各自自由なパフォーマンスに託しています。


自由は土佐の山間より-(高知市立自由民権記念館前)

よさこい祭りの特色は、①非日常としての新しい都市の祭り、②正調と進化チームの並存、③進化を促す自由性・多様性・開放性と自己主張、④地区競演場・演舞場と町内会・商店街チームの存在感、⑤民謡《よさこい節》と新民謡《よさこい鳴子踊り》が持つアイデンティティ、⑥女性の祭り、そして故郷・高知へのこだわり、であるのです。

よさこい祭りは単なるイベントではなく、新しい都市の祭りとしてさまざまな試練を克服しながら成長してきました。半世紀の歩みは、高知という環境と人間が育ててきたと言えます。幕末から明治にかけ日本をリードしてきた土佐は、現代でも日本をリードする祭りを完成させたのでした。

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