「よさこい祭り20年史」から読み解くルーツ⑥

20年史 「祭りの起源探究、将来の資料に…」

「よさこい祭り20年史」には、よさこい祭りが始まる前の1954(昭和29年)7月から、1973(昭和48)年7月まで、振興会事務局の資料を基に、日々の出来事を克明に記した「よさこい祭り年表」が掲載されています。
そこには、濱口八郎さんが舞踊原案を提出したことや、よさこい鳴子踊りのレコードをつくり各方面に配布したことなどとともに、初回の祭り直後に行った「批判懇談会」の様子も併せて記載。
「高知新聞へよさこい祭りについての批判の声が随分入っている。歌詞や踊りについての批判である。方言は郷土でも取り上げられないほど下品なもので、県外へ出すべきではない。来年はぜひ改善してほしい」「不景気だ不景気だといって憂鬱になっていたが、この催しで一ぺんに気分がさっぱりしたという声も聞いた」などと、初回の祭りには、賛否入り混じった意見があったことが記されています。

そして巻末の編集後記にはこう記されています。

「よさこい祭りが20回目を迎えるにあたり、祭りの起源を探究、その後の発展段階を記録し、将来の発展の資料にするため、20年史刊行が企画された」とし、編纂にあたっては「単によさこい祭りの記録にとどめず、土佐の踊りの歴史にさかのぼり起筆。よさこい祭りの創始のいきさつを生い立ちとした」と続けられています。
それは、よさこい祭りの起源を後世に伝えようとする、意思を表わしたもので、「-20年史」の編集委員会のメンバーには、よさこい鳴子踊りの楽曲を手がけた武政英策さん、振り付けを担当した濱口八郎さん、よさこい祭り生みの親とされる2人の名がそれぞれ記されています。

以下、第1回よさこい祭りについての「-20年史」(一部抜粋)の記述をご覧ください。


当協会の若柳由喜満代表も初回のよさこい祭りで演舞


地方さんも三味線を手に練り歩いた


第1回よさこい祭りで優秀団体賞を受賞した若柳流連中の皆さん(写真はいずれも若柳由喜満所蔵)

第1回の祭り 鳴子踊りには21団体750人 合成酒ただ飲み、ハシケン関所破りも

不景気風を吹っ飛ばし、夏の一大行事として、観光土佐の新名物にしようとの願いを込め、「第1回よさこい祭り」が8月10、11の両日、開催された。 高知商工会議所、高知県観光連盟、高知市観光協会、高知新聞社主催、高知県、高知市、NHK高知放送局、ラジオ高知(高知放送)、高知市商店連盟の後援により構成された「よさこい祭振興会」が実施主体となった。 

 1954(昭和29)年8月10日(火)午後1時、3発の煙火とサイレン吹鳴を合図に、高知市議会議事堂における高知市民の健康と繁栄を祈願する高知市民の祭典により幕が切って落とされた。 高知市民祭は、中島龍吉市議会議長が祭主となり、氏原一郎市長、岡村三省県議会議長、入交太蔵高知商工会議所会頭など関係者、市民200人が参列、高知県神社庁高知支部の神職20余人の司祭によって厳粛に祭典が挙行された。

合図の煙火とともに一斉に街に繰り出した踊り子隊は、揃いのユカタ、ハッピ、スゲ笠、あねさんかぶりなど思い思いのスタイルで、にぎやかなハヤシに合わす手拍子、足拍子、鳴子の音もさわやかに酷暑にめげず乱舞を開始。合成酒のタダ飲み会なども行われ、市内は興奮に包まれた。

 午後2時から、高知公園追手門内の本部競演審査場と帯屋町2丁目、グリーンロード、はりまや橋、本丁筋3丁目、愛宕町、菜園場、梅ノ辻の市内7カ所に設けられた協賛舞台で郷土舞踊やよさこい鳴子踊りを披露。 

踊り子たちは、市内の繁華街を練り回り、徳島の阿波おどりの一行も協賛して市民の拍手を浴びた。 高知公園追手門内に特設された審査舞台では、第1日目は主として郷土自慢の各地の郷土芸能21団体の審査が行われ、それに新作鳴子踊りも4チームが番外飛び入り競演した。

8月11日(水)第2日目は、市内各地区から老若男女の踊り子が参加して公園追手門内で「よさこい鳴子踊り」競演会を開催。またハシケン関所破りなどの行事も行われた。

定刻の午後2時、競演開始に先だち、前日郷土芸能の競演で入賞した5団体に対し中島龍吉審査委員長から優勝旗と賞品をそれぞれ授与、引き続きよさこい鳴子踊りの審査に移った。前日審査の分に加え審査の結果、若柳流連中など10団体が優勝と決定。優秀団体代表に優勝旗を授与して審査会は終了。

追手門審査閉幕後、入交太蔵会頭はじめ高知商工会議所議員、職員の一団約30人が審査舞台を皮切りに市内全部の舞台を巡回して踊りおさめ午後11時半はりまや橋にて解散した。
両日出演した鳴子踊り団体は21、約750人であった。

【よさこい鳴子踊り参加団体】 

高知市料理業組合(60人)玉水町(10人)井口町暁市場(20人)五丁目公民市場(20人)高知市役所(50人)若柳流連中(60人)新本町二丁目(10人)栄田町(20人)潮江町(40人)菜園場町(17人)愛宕町子供組(13人)愛宕町大人組(30人)安芸郡芸西村(25人)高知専門店会(50人)帯屋町専門連鎖店(100人)中種京町商店連盟(50人)四国銀行(100人)大橋通り商和会(30人)柳町美松(10人)本丁筋三丁目(15人)本丁筋五丁目(30人)高知商工会議所(30人)[優秀団体]= 若柳流連中、愛宕町子供組、愛宕町大人組、高知専門店会、帯屋町専門連鎖店、中種京町商店連盟、大橋通り商和会、本丁筋三丁目、四国銀行、本丁筋五丁目 

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