宗安寺の旧山荘で辿る「武政英策物語」 ~甥・森田繁広さんに聞く~(前編)

▶ざっくばらんな人柄 トレードマークはベレー帽


 

―森田さんから見て、武政さんはどんなお人柄でした?

仕事の関係もあったかもしれんけど、おじちゃんとはすぐ打ち解けることができましたね。結婚してからは、まだ私のおやじもお袋も市内におったし、ここは女房の方やから、あまり足を運ぶことはない。けど、なぜか分からんけど、こっちに足を運んできて、「将来この2人(武政さんご夫婦)を、私が看るようになるんかな」って思ったんですよ。 
 

―それはいつの話ですか?

結婚して、4,5年経ったぐらいやったろうか。なんかこの感覚は上手く説明できん。けど、おじちゃんはいつ来ても「森田くん、来てくれたかよー」って、まるで、自分の子どものように「よう来たねー」って。ざっくばらんな人柄やった。作曲家って言ったら、近づきがたそうで、話しにくそうってイメージがありそうやけど、そんなことは全くなかった。一方で頑固なところもあって、嫌なことは嫌とはっきり言うし。けど、なんか懐へすっと入っていけそうな、おじちゃんはそんな性格やった。 
 

―いろんな顔をもってらっしゃったんですね。

そうやね。おじちゃんはいつでも本音を見せてくれた。人って「嫌われたくない」とか、「嘘で、ごまかそう」とか、普通、人に対して建前みたいなものがいろいろあるじゃないですか、けど、そういうことは一切なかった。おじちゃんは私のことを本当に信頼してくれちゅうっていうのが話し方で分かった。やき、私らがいつ来ても「よう来てくれた。春子!はよう、お茶でもお菓子でも出しちゃってくれ」っておばちゃんに言いよった。そうやって、接してくれたき、「おじちゃん、どうで?」って再々ここへ上がってきている自分がいましたね。


―武政さんは、動物が好きで、ここ宗安寺で、ご夫婦で犬もかってらっしゃってたんですよね。

そうそう、茶色と黒の、甲斐犬?って言うんでしょうか。子どもがいない夫婦がこんな山の上に住むのは寂しいところもあったかもしれんし。おじちゃんは、ここでよく、椅子に座って、犬をなでながら、にこにこしよった。そんな光景が今でもふっと思い出されますね。

―武政さんはお洒落で、いつもベレー帽かぶっているイメージがあるんですが。

もうねー、いつ来ても、ベレー帽かぶってましたよ。

―家の中でも?

そうですよ。いっぺん思ったんは、おじちゃん、髪が薄いのをかくそうとしているんじゃないかって…、でもふさふさでした(笑)。


(ベレー帽姿で女優の故森光子さんとのツーショット)