【うたって知る】

このコーナーでは、よさこいの原点・文化を、歌詞や楽曲などの「音楽」のジャンルから、さまざまなアプローチをしていきたいと考えていきます。
シリーズ最初となる今回は、当協会副代表の岩井正浩・神戸大学名誉教授が、よさこい祭りを「進化するパフォーミング・アーツ」と位置づけ、黒潮のリズムの流れをくむとされる「よさこい節」・「よさこい鳴子踊り」の楽曲などについて、独自の視点から考えています。

『よさこい祭り 進化するパフォーミング・アーツ』

戦後、高知に立ち上がったよさこい祭り。その精神は、民謡を軸にした《よさこい鳴子踊り》をベースにして自由な表現を生み出した新しい都市の祭りの誕生でした。
筆者は第33回大会からよさこい祭りに注目し、ある時はにわか連のチームに加わり、またある時はチームの地方車(じかたしゃ)に搭乗させていただいて終日、高知の街々を汗だくになりながらともに味わった感動は、沿道とは一味違ったよさこい祭りの体験でもありました。高知のよさこい祭りは全国に伝播したよさこいの元祖であり、自由な表現の伝達者でした。
よさこい祭りは正調を堅持しつつ進化をしていますが、正調と進化はともに並列し常にフィードバックをしつつ年を重ねてきています。3世代の家族が一緒に踊る、幼児から高齢者が一つの祭りの輪の中で踊る、学校が一つにまとまる、友人同士が集うなど、まさに市民の祭りとして成長してきました。
チームを先導する司令塔である地方車は山車・だんじりであり、地方車から流れる音楽は囃子であり、そして衣装・鳴子・メイク・小物などで仮装し、街を踊り練り歩くパフォーマンスはまさに現代の練り風流(ふりゅう)です。1年に1度、灼熱の土佐で繰り広げられるよさこい祭り。60数年を経て確実に新しい都市の祭りとして定着し進化を続けています。
まずは、そんな祭りを生み出した自由で開放的な土佐の風土から紹介していきます。

(岩井 正浩)


高知市の追手筋本部競演場終点から高知城を望む=筆者撮影

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