よさこい祭りは、地域に密着したハレの場

祭りには適正規模があります。それは踊る側・見る側ともに完全燃焼ができる参加チームと場所が関係してきます。帯屋町筋アーケードでのパフォーマンスは、見る側とのスキンシップに満ち溢れています。
3つの皆勤チームもあれば、不況で2年間の不出場の後、再度出場を果たした大賞受賞チームもあります。その中で、伝統的な正調踊りが継承されてきたことと並行して、アップデイトな音楽・衣装・振付に彩られたパフォーマンスも見られます。
踊る側の意識は、まさに踊りたいという主体的欲求から生まれて、目立ちたいという欲求が、より祭りを盛り上げる効果を生んでいます。30万人口の地方都市である高知市で、例年約18.000人の踊り子がパフォーマンスを繰り広げています。


(地域性に彩られたパフォーマンスをー。よさこい祭りの演舞より=筆者撮影)

そこには親子3代の参加者もいます。皆勤チームである「上町よさこい鳴子連」チームの振付を担当しているのは、子ども時代に踊った女性でした。しかし一方で、祭りの第一世代は確実に第一線から退かざるをえない年齢に達してきており、不況で虫食い状態の商店街や、運営資金の不足が憂慮される時期にも来ています。
ただ、よさこい祭りは66年の歴史の中で、さまざまな試練を克服してきました。大音量・ゴミ・交通渋滞・未成年の逸脱行動などは、進化の過程で避けることのできない課題でもあり、これらの課題はよさこい祭りに関わる主催者・参加チーム・市民たちの忌憚のない議論(新聞紙上など)で克服してきています。

よさこい祭りでのパフォーマンスは、今日の閉塞感の漂う社会で思いっきり自己を表出したいという、人間の本能である自己表現、「集う・群れる」ことへの欲求を満喫させる場でもありました。カラオケは確かに自己表現を日本人にもたらしが、よさこい祭りのパフォーマンスとは違っています。
それは〈群れる〉、〈身体表現する〉、そしてハレの場を観衆とともに満喫するという魅力でしょう。そして「祭りは地域に密着したハレの場であり、名称ともども地域性に彩られたパフォーマンスの場」だからです。全国各地で「よさこい系」祭りが花開くこと自体はすばらしい。ただ、その中心に「地域性、地域住民との密な関わりがあるか」、「地域住民の年中行事として、支えられ支持されているか」,そこが祭りとイベントとの決定的な相違であるのではないでしょうか。

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