Ⅰ.自由・開放性を生み出した土佐
1.南国土佐の気風
高知は太平洋に面し、海の恵みを受けてきました。また旧制高知高校の《豪気節》の歌詞にも海洋民族としての土佐の血が騒いでいます。
一つとせ 一人のあの娘が恋しけりゃ 潮吹く鯨で気を晴らせ そいつぁ豪気だね
三つとせ 南のお国は土佐の国 革命と自由の生れし地 そいつぁ豪気だね
九つとせ この浜よする大涛は カリフォルニヤの岸を打つ そいつぁ豪気だね (註1)
また、「《豪気節》は《大漁節》にヒントを得て作られた」とも言われています。 (註2)
高知市立自由民権記念館
土佐の自由民権歌集=復刻版
よさこい祭りを誕生させた土佐には、幕末より自由を希求した風土があります。明治期の自由民権運動はその現れです。2006年6月3日~7月1日にわたって開催された『民権はやり歌入門』では、《よしや節(武士)》、《オッペケペー節》、《民権かぞへ歌》、《ダイナマイト節》が歌われています。
《よしや節》は安岡道太郎編で、「よしや」は記念館の解釈では「たとえ」や「仮にも」の意味でした。いただいた別の歌詞では暁鴉山人(安藤道太郎)撰、《世しや武士》となっています。歌詞の語句が一部変わっていますが、ほぼ同じ歌詞で、68編もあります。旋律は《よさこい節》です。
《よしや節(武士)》
よしや 南海苦熱の地でも 粋な自由の風が吹く
よしや 田植のあたしが身でも 後にさがるは好きでない
よしや この身はどうなり果ちょが 国に自由がのこるなら
よしや お前が通さぬ気でも 開けゆく世に関はない
よしや 糸目が切れよとままよ わたしゃ自由の奴凧(以下省略)
《民権かぞへ歌》は植木枝盛作で、旋律は旧制高知高校の《豪気節》です。
一つとせ 人の上には人はなき 権利にかはりはないからは この人じゃもの
二つとせ 二つとはない我が命 捨てても自由のためならば この惜しみゃせぬ
三つとせ 民権自由の世の中に まだ目のさめない人がある このあはれさよ
四つとせ 世の開けゆく其早やさ 親が子供に教へられ この気をつけよ
五つとせ 五つに分れし五大州 中にも亜細亜は半開化 このはづかしや
(『自由民権はやり歌入門』以下20まで)(註3)
註1) 金田弦彦作詞《豪気節》。「この歌は若人の歌であり感激の歌です。戦勝に乱舞する時歌ってよく感激の輪舞に黒潮に和して歌ふも亦よし」とあります。『旧制高知高等高校五十年史』旧制高知高等学校同窓会 主婦の友 1965年
註2) 高知新聞『四国音楽散歩』2006年1月19日。1月12日では、《酋長の娘》の元歌となっているのが旧制高知高校の第1回運動会で行われた際の記念歌《ダクダク踊りの歌》(余田弦彦作詞・作曲)だと論じています。
註3) 高知市立自由民権記念館蔵。『民権はやり歌入門』。《よしや節(武士)》、《オッペケペー節》、《民権かぞへ歌》、《ダイナマイト節》、《オッペケペー節》がおさめられている。2011年には詳細な内容が高知市市立自由民権記念館友の会から『土佐の自由民権歌集 世しや武士』(復刻版)として刊行されています。